• 院長エッセイ

■No.03■むし歯に無縁の野生動物から、人間のQOLについて考える。

  近年QOL(クオリティ・オブ・ライフ 生活の質、人生の質)の向上ということがよく言われるようになりました。確かに、文明の進歩と共に、お金をかければ快適な生活が簡単に手に入る社会になってまいりました。しかしよく考え直してみて下さい。地球上のすべての動物の中で文明を作り出したのは人類だけですが、その文明の中で生きている人間だけが、努力しなければ自分の健康を維持できないのです。
 簡単に言えば、野生のライオンやサルは、歯を磨かなくてもムシ歯や歯槽膿漏にはなりません。中には過保護に育てられているペットの犬や猫に歯槽膿漏が見られますが、それは人間が作り出したものです。野生オオカミの歯槽膿漏は聞いたことがありません。人間は寒い時期に暖房や衣類がなければ風邪をひきますが、野生動物には必要ありません。つまり。人間だけが何らかの努力が必要なのです。
 もう一つ、人間の特殊性があります。それは、人間には知性もありますが、自分でコントロール出来ないほどの感情もあるということです。
 たとえばほとんどすべての人間が、健康でありたいと願い、健康の有り難さをしっていながら、自分の体に悪いことを平気でやりますし、予防のために必要なことはやりたがりません。バランスの取れた栄養や適度な運動、そして、食後や寝る前の歯磨き等、健康のために絶対必要なことは万人が知っていながら、すべてに気を配っている人の少なさは皆さんの周りをみてもよくお分かりでしょう。
 文明の進歩の中で生活し、快適な人生を送りたければ、自分の健康維持のためには努力が必要です。そしてそのためには、残念ながら時間とお金も必要になります。豊かな食生活を送れば送るほど、口の中の管理は必要になります。QOLの向上を望むならばそれに見合う努力も必要なことを忘れてはいけません。それができて初めて真の文明人と言えるのではないでしょうか。

 
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