• 院長エッセイ

■No.05■顎の関節は、複雑な動きには強いが心的ストレスには弱い?!

  人間の体には多数の関節がありますが、その中で顎(あご)の関節はとても不思議な関節です。他の関節と違い、前後にスライドできるからです。普通だと、関節窩から関節頭が飛び出せば、「関節がはずれた」とか「脱臼した」という病的な状態になってしまいます。ところが、顎の関節は、可動域の範囲では左右の関節がスライドできますから、とても複雑な動きができるのです。
 食べ物を左右で噛む時と、左側で噛むときとでは、左右の関節が全く別の動きをします。したがって、あまりにも片寄った噛みをしていると、関節や筋肉に変形が生じて顔が曲がってしまいます。人間は日常、安静にしている時は歯を噛み合わせていません。つまり下顎は宙に浮いた状態にあるはずです。その時は、歯の状態がどうであれ、歯と顎は無関係です。
 ところが、ものを食べる時は、歯の位置や形で左右の食べやすさが違ってきます。そのために、歯並びやむし歯、歯の欠損は顎と関係してきます。
 もうひとつ大切なのは、人間が眠っている時の行動です。健康な人も、睡眠中15分くらいはくいしばりがおこります。精神的な疲労、ストレスがあると、強くくいしばる傾向があり、顎の関節に大きな負担をかけることにもなります。
 20~30年前は、顎関節症という病気は一般的ではありませんでしたが、噛み合わせの悪い人が増えているとともに、ストレス社会の中で生活する結果、顎関節に問題を抱える人も大変多くなっています。ちなみに私も顎関節症です。自分で自分の治療を行っているのです。

 
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